上述の記事にもあるとおり、日本ミシュランタイヤは先月29日、レストラン格付け本「ミシュランガイド東京2017」の掲載店を発表した。昨年初めて一つ星を得たらーめん店のジャンルでは新たに豊島区大塚の鳴龍が一つ星を獲得し、豊島区巣鴨の JSN 蔦と日本のらーめん店では計2店となった。
世の中おめでたいおめでたいと祝賀のムードなわけだが、これ、なんか嬉しいんだっけ?どうして嬉しいと思うんだっけ?正直わたしには理解できない。
そもそもミシュランがなんだか皆は分かってるだろうか?フランスのタイヤの製造業ですよ?では、ミシュランガイドってなんだか分かってるのだろうか?そのミシュランのスピンオフ事業の観光ガイドブックのことだよ?じゃあ、なんで観光ガイドなんてタイヤの製造業のミシュランがやってるか分かってんの?観光業に車が使われて、その車が売れることでタイヤも売れたらいいなっていう話なわけでしょ?つまりはミシュランガイドなんてミシュランが自分自身のためにやっていることでしょう?わたしからするとミシュランガイドのとくにレストランガイドなんて完全なるミシュランの道楽事業。そんなミシュランのレストランガイドの星なんてものはそんな道楽事業の中でガイドそのものを売るための目玉としてレストラン等を巡り自分たちの手前勝手な評価軸でお店の良し悪しを測って評価しているものだというに過ぎない。歴史が長いということはわたしも認めるが、それだけのこと。わたしはそこに権威など微塵もないと思っている。食の口コミレビューサイトについてはそれはそれでいろいろと問題が取りざたされているが、それと何ら変わるものではない。むしろ不特定多数の人間の意見を反映していないので食の口コミレビューサイトにすら劣るものだとわたしは思っている。
こういったことを何も考えずに大衆迎合的にミーハー街道をひた走りたい方々をわたしは止めはしない。ミシュランに紹介されたwミシュランに紹介されたwwという理由でお店を巡ったらいい。そういった人たちのおかげで当面、本当にそのお店が好きな人たちはお店に行きづらくなるが、もはや仕方のないことである。
では、ここからはタイトルの話をしていく。
タイトルの話をしていくといいつつ、ちょっと話が脇にそれた話を先ずはする。先日、今年のノーベル賞が発表されて、文学賞を受賞したボブ・ディラン氏と連絡がとれないとか、氏が表彰式に行かなかったことが話題になった。
ちなみにこのときボブ・ディラン氏をカッコいいという声があったが、なぜカッコいいのか皆はちゃんと分かっているのだろうか?
理屈的にはミシュランと同様のことが言える。ノーベル賞もノーベル財団が勝手にそれまでの各分野の功績があった人間を表彰する仕組みだ。名誉なことであることに違いはないが、そもそもどの分野の功績があるとされている方々も、ノーベル賞が欲しくてその道に従事した方々ではないだろう。
ディラン氏がカッコいいのは、ノーベル賞受賞が名誉であることは正直に嬉しいと語った上で、表彰式に行くことはしなかったことだ。もちろん予定が合えば行ったのかもしれないが、そもそも勝手に選ばれたものだし、勝手に表彰すると言われても都合が悪いならいかないっていうのは当然のことだ。ノーベル賞にすら権威はないということを示してくれた。だからカッコいいのではないか、と。
そしてこれこそがロックンロールだとわたしは思う。ロックンロールは自分が信じる信念を貫き通す反駁の精神哲学である*2。何をするのも決めるのも自分自身の自由だ。誰かに褒められようとして何かをするのでは情けない。ましてや権威に阿(おもね)るために何かをするなら論外だ。
ましてやミシュランやをや、ではないだろうか。
らーめん店ではよくロックンロール、ロックンロールと言っている店主がいるのを見かけるが、言葉だけで言っているのでないのであれば、そういったらーめん店主の方々はミシュランの星がほしいなどと言ってはいけない。
仮に不可抗力でミシュランの星をもらえるということになっても、ディラン氏のように素直に嬉しいと謝辞を述べた上で、丁重に辞退してほしい。そのロックンロールの言葉に嘘がないのであるならばだが。
むしろ、ミシュランの星を得ることで、大衆迎合的なミーハーが押し寄せて大行列になることで、従前の常連客が離れるようなことになったとして、それはあなた方が望むことではないだろう?(もちろんそのお店の愛ゆえに通い続けるお客もいるのかもしれないが)。
お店をはじめた原点がミシュランの星をとることだったのなら残念すぎるので何もいうまい。わたしはそんな今目の前にいる客を大切に出来ないお店には行かないというだけに過ぎない。
最後に水木しげる先生の一周忌に際して紹介されていた先生の言葉がバズっていたので紹介して〆たい。水木先生も相当なロックンローラーだ。
水木しげるさんの命日。俺の人生の指針となっている言葉。 pic.twitter.com/J47WPnhHZH
— 🍛ふとんの王国斎(隠者)👳 (@benrinananika) November 30, 2016
余談
ミシュランの星を獲得した2店のらーめん店のうちの一店舗の大西店主が以下のようなツイートをしていた。正直、わたしは店主のことをよく存じあげないが、このツイートにはガッカリした。
鳴龍さん!おめでとうございます!
— JapaneseSobaNoodles蔦 (@Yuki_Onishi_) November 30, 2016
同じ2012年組として嬉しいです!
コラボやります。
豊島区ももうここまできたら手助けほしいw pic.twitter.com/QKs92QQ7B4
※念の為の魚拓
このツイート、後半の意図が解釈しかねるのだが、わたしには豊島区に自分のお店を支援してほしいと言っているように読める。一体何を言っているのだろうか。市区町村などの自治体が税金をつかって特定のお店だけを支援するなんてことがあると思ってるのだろうか?
氏は昨年にミシュランから星を受けて周辺住民とも、狂騒的に押しかける客の間とも一悶着ふた悶着あったはずである(そういうブログを当時しょっちゅう書いていた)。ちなみにその当時、迷惑をかけていたのは誰だと思っているのだろう。周辺の豊島区民の方々だったのではないのか?どの口をついたらその周辺住民を含む豊島区の方が税金を納めている豊島区に支援して欲しいという言葉が口をついて出てくるのか、わたしには理解しかねる。
わたしが豊島区民なら憤慨するところだが、豊島区民らしき方々が憤慨している様はTwitterからはみてとれなかった。
本エントリの冒頭にすでに書いたがミシュランの星になど何の権威もない。ただそれを権威と思ってしまっている人たちがいるから狂騒的に集まる人間が出てくるということにすぎない。そういった人たちはそもそもミシュランがなんだかすら分かっていないような人たちである可能性すら高い。それを自分たちの力でどうにかできないというのならば、そもそも受賞を拒否するなりできることはいろいろとあるだろうとわたしは思う。どういった客にきてほしいとJSN蔦さんが思っているのか、わたしは知らないが、今集まっている客層をみるとお察しとしかいいようがない残念な感じだ(わからない方々は行ってみればいい)。そんなお店に税金を豊島区が使いますと言い始めたらわたしが豊島区民ならダンコ怒るだろう。
ミシュランの星を受けることを決めたのはご当人なのだから、安直に自治体に支援を求めるような発言は仮に冗談でもしないでほしい。
さらなる余談の余談で言うと、JSN蔦さんがミシュランの星ひとつ維持できたことについてはわたしは物言いをつけたい。JSN蔦さんはたしかに美味しい。だが、ミシュランのようなもともとが観光ガイドであるものが星をつけるのには適さないのではないかと思うところが多々ある。例えば、場所。このお店はラブホテルの対面にある。その周辺もどんなものがあるかは行かなくてもGoogle Mapsをみれば分かる。気になるなら見てみたらいい。そういう場所を敢えて訪れることを薦める観光ガイドってなんなんですかね?次にスタッフの応対。JSN蔦さんで食べるにはまず整理券を受け取りにいかないと行けない仕組みになっているのだが、その整理券を渡す際のスタッフの方の態度が傲岸で不遜だ*3。ミシュランの評価者が来訪された際にはペコペコしていたということなのだろうか。最後に客のマナー管理の問題。整理券をもって並んでいる客のマナーは最低だ。マンションのエントランス周辺に並ぶことになるのだが、縁石に腰掛けている人たちが後を絶たない*4。話し声もうるさい。これで周辺住民と一悶着ふた悶着がない方がおかしいだろう。ミシュランに本当に権威に値するだけの評価の目があるというなら、メニューだけに目を向けているようではダメだろう。わたしの目から見る限りミシュランにそれができていないことは明らかなので、やはり食べログなどの口コミレビューサイトと同レベル、もしくはそれに劣るものでしかないと言わざるをえないだろう。
ちなみのちなみであるが、鳴龍さんのほうはあまりブログ等熱心にされている風もなく、ウェブ上でコメントらしいコメントをみないことも手伝って好感はもっていても悪い印象はわたしはもっていない。行列がもともと長い以外はお店はいたっていい雰囲気だったし、味もとても素晴らしい。むしろもともと臨休等も多いお店だったので、変にミシュランで星などもらってしまったことで今後の店主さんの体調管理維持が気になるところであったりする。ミシュランで星を獲得という報があって以降 2-3 時間待ちといったことを聞くので、当面わたしは行く気になれない。その点のみが残念だ。
了:4910文字
お題「ラーメン界の噂」:わたしははてな星はもらっても嬉しくない。はてなブックマークがほしい。そう思いながらこのエントリは書かれた。
※アイキャッチはパンクロッカーのイラストとバンギャのイラストを迷って後者を選んだ。こんなのはロックじゃない感が出ててすごくいい。いらすとやさんにはいつも感謝。
*1:ミシュランガイドのサイトをみてもあまり込み入ったガイドそのもの説明はなかったので参考までにWikipediaのリンクを貼っておく。
*2:あくまでわたしの持論だが
*3:少なくともこれまでわたしが整理券を受け取った際のやりとりをされた方に好感を抱いたことがない
*4:ここ半年くらいは行っていないのでどうなのかわからないところはあるが